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妻を救うため過去にタイムトラベル【時空旅行者の砂時計】

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~ミステリー×SF(タイムトラベル)~

方丈貴恵『時空旅行者の砂時計』東京創元社

 

 

 

あらすじ

 

マイスター・ホラを名乗る者の声に導かれ、2018年から1960年へタイムトラベルした加茂。瀕死の妻を救うには、彼女の祖先を襲った『死野の惨劇』を阻止する必要があるというのだ。惨劇が幕を開けた竜泉家の別荘では、絵画『キマイラ』に見立てたかのような不可能殺人の数々が起こる。果たして、加茂は竜泉家の一族を呪いから解き放つことができるのか。

 

引用元:東京創元社Webサイト
(https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488499211)

 

 

主要登場人物

【加茂夫妻】
加茂 冬馬(かも とうま)
本作品の主役。32歳。
過去にタイムトラベルし、竜泉家を襲った惨劇を防ごうとする。

 

加茂 伶奈(かも れな)
冬馬の妻。27歳。
竜泉家の末裔。

 

【竜泉家】

※詳細な血縁関係は、作品巻頭の家系図で視覚的にわかりやすく確認できます。
竜泉 太賀(りゅうぜん たいが)
竜泉家の当主。83歳。
語り手いわく「凄味がある」。

 

竜泉 漱次郎(りゅうぜん そうじろう)
太賀の息子。56歳。
語り手いわく「紳士然とした男」。

 

竜泉 幻二(りゅうぜん げんじ)
太賀の孫。27歳。
語り手いわく「和風で地味な顔」。

 

竜泉 月彦(りゅうぜん つきひこ)
太賀の孫。21歳。
語り手いわく「女性受けがよさそう」。

 

竜泉 月恵(りゅうぜん つきえ)
太賀の孫。20歳。
語り手いわく「声は女性にしてはハスキー」。

 

竜泉 文香(りゅうぜん あやか)
太賀のひ孫。13歳。
語り手いわく「可愛らしい子」。

 

刀根川 つぐみ(とねがわ つくみ)
竜泉家の使用人。41歳。
語り手いわく「美人」。

 

雨宮 広夜(あまみや ひろや)
竜泉家の居候。20歳。
語り手いわく「人が好さそうな顔」。


【その他】
マイスター・ホラ
時間の番人を名乗る謎の存在。
語り手いわく「慇懃無礼」。

 

特徴

第29回鮎川哲也賞を受賞した、方丈貴恵の記念すべきデビュー作。〈竜泉家の一族〉シリーズの第一作でもあります。

 

物語の舞台は、大富豪・竜泉家の別荘である洋館です。呪われた一族、陸の孤島、不可能犯罪、見立て殺人、読者への挑戦状と、ミステリ好きにはたまらない要素が多数盛り込まれています。しかし、本作が異彩を放つのは、そこにタイムトラベルというSF要素を重ねている点でしょう。

 

しかも、そのSF要素は単なる書割ではなく、しっかりミステリと融合しています。裏を返せばタイムトラベルのルール(制約)を頭に叩き込まなければ推理を楽しめないことになりますが、この手の作品にしてはルール(制約)を覚える負担は比較的軽いほうだと思います。

 

ミステリとして練られているのはもちろんのこと、物語としてもぐいぐい読ませる一冊です。

 

この小説に向いている人

・特殊設定ミステリが好き。
・家系図を見るとワクワクする。

 

この小説に向いていない人

・SF要素に擬科学的な説明を求めている。
・「時空旅行者」という語から、複数の時代を訪れる冒険譚を期待している。

 

まとめ

平成最後の鮎川哲也賞受賞作にして、同賞初の令和刊行作品。妻を救うため、竜泉家の一族を呪いから解き放つため、主人公こと加茂冬馬が過去にタイムトラベルするミステリです。


『〇〇の殺人』や『〇〇事件』といった露骨な題名の作品群とは対照的に、『時空旅行者の砂時計』はずいぶんと上品な印象を与えますが、両者ともに不穏当な描写があることは変わりません。当然のことながら、ショッキングな場面も描かれています

 

注目すべきは、タイムトラベルという大胆な設定を取り込みながらも、それをミステリの構造と有機的に結び付けている点でしょう。


一歩誤れば"何でもアリ"の混沌に転びかねない題材を、破綻なくまとめあげる構成力。方丈貴恵という作家の卓越した手腕は、すでに本作の段階で見て取ることができます。

 

追記①この小説が好きな方にオススメ

孤島の来訪者

続編です。