~〇〇〇〇〇な講義が講戯~
円居挽『語り屋カタリの推理講戯』講談社
あらすじと収録作品
【あらすじ】
「君に謎の解き方を教えよう」少女ノゾムが、難病の治療法を見つけるために参加したデスゲーム。条件はひとつ、謎を解いて生き残ること。奇妙な青年カタリは、彼女に“Who”“Where”“How”などにまつわる、事件を推理するためのレクチャーを始める……!広大な半球密室、水に満たされた直方体、ひしめく監視カメラ、燃え上がる死体。生き残るには、ここで考えるしかない――。
引用元:語り屋カタリの推理講戯|講談社
(https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000213000)
【収録作品】
1.フーダニット・クインテット
2.ハウダニット・プリンシプル
3.ワイダニット・カルテット
4.ウェアダニット・マリオネット
5.ウェンダニット・レクイエム
6.ワットダニット・デッドエンド
主要登場人物
ノゾム
髪に銀のメッシュが入った少女。
ブレザーに身を包んだ姿は、視覚的には中学生程度の年齢に映る。
性格は素直で、他人を出し抜くより周囲と協力して行動することを選ぶタイプ。
カタリ
眼鏡をかけた長身の男性。外見上は、三十歳を過ぎているように見える。
ノゾムに対して、推理に関する「レクチャー」(講義)を行う。
困難な状況でも終始余裕を漂わせる、ミステリアスな人物。
カクライ
堂々とした振る舞いの若い男性(青年という形容はされていない)。
ハンサムな容貌と、理知的な輝きを帯びた瞳が印象的。
カタリに対して、どこか対抗意識を燃やしている節がある。
特徴
円居挽による連作短編集。
物語性はやや控えめで、人物の感情やドラマを追うというよりは、ミステリ的な要素を味わうべき小説といえるでしょう。そのため合う人にはとことん合う一方で、合わない人にはとことん合わない小説かもしれません。(でも、ミステリの短編はそういうの珍しくないから!)
物語の舞台となるのは、とある宗教団体が運営していると噂される「違法」な謎解きゲーム会場。
そこに集められた参加者たちは互いに競い合い、
「フーダニット」「ハウダニット」「ワイダニット」「ウェアダニット」「ウェンダニット」「ワットダニット」
という、いわゆる5W1Hに分類された謎に挑みます。そして、すべての謎を解き終えた参加者は、どんな願いも叶えてもらえるとのこと。
そんな異様なゲーム空間を舞台に展開される推理講義とその実践が、本作品の見どころのひとつになっています。
ともすればその題名から『よくわかるミステリ入門!』みたいな印象を受けるかもしれませんが、実際にはミステリに親しんだ読者にも、十分に楽しめる内容です。
※追記
そういえば、タイトル回収というか、題名が講義ではなく「講戯」となっている理由についてですが――意外とさらっと出てくるので、意識していないと読み流してしまうかも。
そもそも題名を「講戯」ではなく講義だと勘違いしている人なんてイマセンヨネー?
もちろん、私は再読するまで勘違いしていました。
この小説に向いている人
・推理に関する講義に興味がある。
・ロジックを重視している。
この小説に向いていない人
・重厚なストーリーを求めている。
・「語り」という語から、ナラトロジーに関するうんちくを期待している。
まとめ
人間ドラマや舞台設定についての精緻な描写より、ミステリ的な要素に比重が置かれた連作短編集です。
全体としては「これぞ円居挽!」と言えるほどの強い個性が前面に出ている作品ではありませんが、それでも随所に円居挽の風味(作家性)を感じることができます。
読むタイミングによって、異なる面白さを体験できる一冊でもありますね。
余談
2021年から情報が小出しされ、幾度となく発売が延期され、もはや待つことそのものがコンテンツの一部と化している『EDEN.schemata();』というゲームがあります。(発売延期については、我々には見えてこない色々な事情があるんだと思います。)
このゲームは円居挽がシナリオを担当しているのですが、『円居挽のミステリ塾』において、円居挽はこのゲームについて
「もしかしたら僕はそこに多重解決趣味というものをぜんぶ置いていくかもしれない気持ちになっているんです。」*1
と述べています。
さらには、
「叙述トリックとか言っちゃって大丈夫なの?」という点に関しては、「もう叙述トリックがどうこうみたいなレベルの話じゃないから……」としか https://t.co/ANy6Xjbm0c
— 円居挽@12月25日『京都市民限定で求人が出ているとあるバイトについて』(MF文庫J)発売 (@vanmadoy) 2025年1月30日
なんてポスト(ツイート)もありました。
気になりますね。
公式告知を眺めていると、そろそろ本当に発売される気がしないでもありませんので、興味を覚えた方は要チェックですよー。
*1:円居挽・青崎有吾・斜線堂有紀・日向夏・相沢沙呼・麻耶雄嵩『円居挽のミステリ塾』星海社、2022年6月、160頁。

