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ラスト1行に「うげぇ」となる本格ミステリ【死と砂時計】

~奇想と逆説が横溢する連作短編集~
鳥飼否宇『死と砂時計』東京創元社

 

 

 

あらすじと収録作品

【あらすじ】

 

世界各国から集められた死刑囚を収容する、ジャリーミスタン終末監獄。親殺しの罪で収監されたアラン青年は、“監獄の牢名主”と呼ばれる老人シュルツと出会う。明晰な頭脳を持つシュルツの助手となって、監獄内の事件の捜査に携わるアラン。死刑執行前夜、なぜ囚人は密室状態の独房で斬殺されたのか。どうして囚人は闇夜ではなく、人目につく満月の夜に脱獄したのか。そして、アランが罪に問われた殺人事件の真相とは……。

 

引用元:死と砂時計 - 鳥飼否宇|東京創元社

(http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488025434)

 

 

【収録作品】

1.「魔王シャヴォ・ドルマヤンの密室」
密室状態の独房内で囚人が殺害された。なぜ、あと数時間で死刑になる囚人は殺されなくてはならなかったのか……

 

 

2.「英雄チェン・ウェイツの失踪」
鉄壁を誇る監獄から囚人が逃げ出した。しかも一見して不利な条件が重なるタイミングで脱獄したのは不可解で……

 

 

3.「監察官ジェマイヤ・カーレッドの韜晦」
定年まで残り数日の監察官が殺害され……

 

 

4.「墓守ラクパ・ギャルポの誉れ」
ある囚人が墓を暴いて死体を掘り返し、その肉を食べているという噂があり……

 

 

5.「女囚マリア・スコフィールドの懐胎」
長身の女性刑務官が自動小銃を腰だめで構えた。発射音を立てて火を噴いたそれは……

 

 

6.「確定囚アラン・イシダの真実」
語り手であるアランにもついに死刑執行日が決まり……

 

 

主要登場人物

アラン・イシダ
日系アメリカ人の囚人。ほぼ全編を通して視点人物

 

トリスタン・シュルツ
頭の切れる最年長の囚人。監獄の牢名主的存在。

 

マルコ
イタリア国籍の囚人。性格は軽いが、信仰心は篤いクリスチャン。

 

ハジ
監獄医。ルーズな性格で、物品の管理もいいかげん。

 

アブドラ・ハマーン
獄卒長。看守長には頭が上がらない。

 

アリー・アフムード
看守長。執務室が絢爛豪華。

 

 

特徴

架空の国の監獄を舞台にした連作短編集


いつ刑が執行されるかわからない死刑囚たちが、不可思議な事件に巻き込まれていきます。


第16回本格ミステリ大賞に選出された作品です!

 

この小説に向いている人

機械(物理)トリックが好き。
・動機を重視している。

 

この小説に向いていない人

事件現場等の図の有無を重視している。
・男性ばかりがクローズアップされる物語は好みじゃない。

 

まとめ

アランとシュルツ老の年の差コンビが、監獄で発生する事件を次々と解決する本格ミステリです。


事件はいずれも奇想天外で、閉ざされた空間でスリリングなストーリーが展開されます。


衝撃のラストも見逃せませんよ?

 

追記①この小説が好きな方におすすめ

法月綸太郎の冒険

作者は法月綸太郎。
こちらの短編集に収録されている「死刑囚パズル」も、死刑執行直前の死刑囚がなぜ殺されたかが争点になっています。
また、鳥飼否宇は「この作品をかなり意識して書いた」とも語っています

当ブログでの紹介記事はこちら。

 

 

十角館の殺人

作者は綾辻行人

「1行ですべてがひっくり返る」といえばコレ。

 

儚い羊たちの祝宴

作者は米澤穂信

強烈なフィニッシングストロークです。