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【小市民シリーズ】甘いお菓子と謎解きの物語【春期限定いちごタルト事件】

~甘いタイトル、甘くない物語~

米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』東京創元社

 

 

 

あらすじと収録作品

【あらすじ】

 

小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校1年生。きょうも2人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、2人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に駆られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星をつかみとることができるのか? 新鋭が放つライトな探偵物語、文庫書き下ろし。

 

引用元:東京創元社公式サイト
(https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488451011)

 

 

【収録作品】
1.「羊の着ぐるみ」
2.「For your eyes only」
3.「おいしいココアの作り方」
4.「はらふくるるわざ」
5.「狐狼の心」

 

主要登場人物

小鳩 常悟朗(こばと じょうごろう)
小市民を目指している男子高校生。
シリーズの主役にして語り手。
小佐内ゆきとは互恵関係にある。

 

小佐内 ゆき(おさない ゆき)
小市民を目指している女子高校生。
髪は尼そぎ(セミロング)で、小さな体躯に見合うように手も足も細い。
小鳩常悟朗とは互恵関係にある。

 

堂島 健吾(どうじま けんご)
男子高校生。腕力と任侠が売りの大男。
新聞部員であり、なぜかよく腕組みをする。

 

特徴

古典部シリーズとは趣を異にする、米澤穂信先生の小市民シリーズ第一弾です。

 

元々はシリーズ化するつもりはなかったとのことですが、「春期」と銘打ったからには春夏秋冬というシリーズにしようなんて話になったとかなんとか。

 

とはいえ、2004年に「春」、2006年に「夏」、2009年に「秋」が発売してからというもの、完結を惜しむかのように13年以上「冬」の気配がありません。

一応2020年に「冬」っぽいカバーイラストの『巴里マカロンの謎』が発売されたのですが、あくまで外伝的位置づけであり「冬」ではないとのこと。文庫に未収録作品もまだ複数残っており、嬉しいことに(?)完結は当分先のことと思われます。

※2024年4月30日に完結編たる「冬」が発売されました。

 

さて、肝心の「春」こと『春期限定いちごタルト事件』の内容ですが、小鳩くんと小佐内さんが「小市民」をめざすというのがおおまかなストーリーとなります。

 

 

 

 

小市民とは
1 《(フランス)petit bourgeois》資本家階級と無産階級との中間に位置する人々。小規模の生産手段を所有し自らも労働する、自営の商工業者や自営農民のこと。中産階級・中間階級ともよばれる。プチブル。
2 俗に、市井の人。一般人。普通の人。

 

引用:Weblio辞書
(https://www.weblio.jp/cat/dictionary/sgkdj)

 

 

 


要は、目立たず穏やかに高校生活を過ごしたいとふたりは考えているわけです。


そんなふうに考えるようになったのは彼らの平凡ならぬ能力に起因するのですが、しかしふたりは望むと望むまいとにかかわらず、学校内外での騒動に巻き込まれていくこととなります。

 

※近年は上昇志向とは対極的なノー残業・ノンストレスな職場が好まれる傾向にあるらしいですね。本作品は2004年に出版された本ではありますが、当時よりは平穏と安定を求める小市民的な生活に共感しやすくなっているのではないでしょうか。

 

 

 

いちごタルト いらすとや

(「いらすとや」様によるいちごタルトのイラスト)

 

この小説に向いている人

・いわゆる日常ミステリ(日常の謎)が好き。
・ロジックを重視している。
・主に学校が舞台の物語を読みたい。

 

この小説に向いていない人

・派手なトリックを求めている。
・学校が舞台の物語に興味がない。
・爽やかなミステリを期待している。

 

まとめ

小市民シリーズ第一弾の連作短編集です。

いわゆる単行本の発刊はなく、書き下ろしとして最初から文庫本が発売がされました。


どうやらそこには米澤穂信さんの「中高生に手に取って貰えるよう安価な文庫本で届けたい」という意図があるそうな。
(編集社側の都合をそれっぽく言い直している気がしますが)

 

日常の些細な謎を解決する推理こそが本作品の醍醐味ではあるものの、小鳩くんと小佐内さんのコンビに好感を持てるかどうかも、楽しめるかどうかの基準になるかもしません。


タイトルも表紙のイラストも甘く可愛いですが、事件の謎もふたりの本性も甘く可愛いとは限りませんよ。

 

コミカライズ

漫画版です。上下巻構成
続編の「夏」も漫画化されていますが、作画担当は饅頭屋餡子さんとは別の方になっています。

 

 

アニメ

R6.1.12追記

アニメ化が発表されました。

詳細は以下のポスト(ツイート)の通り。

絶対にアニメ化する(話題になる)と思っていたので、先に記事を作成しておいたというわけです。いやー、先見の明がありましたね(棒)。

 

 

 

追記①この小説が好きな方にオススメ

夏期限定トロピカルパフェ事件

続編です。

 

氷菓

同著者の作品。古典部シリーズ第一弾
著者のデビュー作でもあります。いわゆる日常の謎を扱うミステリです。
『春期限定いちごタルト事件』よりはけれん味が薄いかもしれません。

 

放課後探偵団

東京創元社が推している若手(2010年当時)作家5名による学園ミステリ・アンソロジーです。

まさに"粒揃い"という形容がふさわしい作品が揃っており、それぞれ毛色の違う作家の作品を探訪できる面白さがあります。

 

 

マツリカ・マトリョシカ

著者は相沢沙呼

マツリカシリーズの第3作目にして初の長編です。

舞台は高校でいわゆる"密室"ものですが、殺人事件は起きません

 

 

ぼくのミステリな日常

著者は若竹七海。デビュー作でもあります。
いわゆる日常の謎を扱うミステリです。

 

空飛ぶ馬

著者は北村薫。デビュー作でもあります。

いわゆる日常の謎と呼ばれるミステリに先鞭をつけた作品でもあります。