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理詰めの本格もの【七十五羽の烏~都筑道夫コレクション〈本格推理篇〉】

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~都筑道夫のミステリ傑作選+α~

都筑道夫 『七十五羽の烏~都筑道夫コレクション〈本格推理篇〉』光文社

 

 

 

内容紹介と収録作品

【内容紹介】

 

平将門の娘・瀧夜叉姫の祟りで伯父が殺されます――まったく働く気のない心霊探偵(サイキック・ディテクティヴ)・物部太郎のもとへ依頼人が来た。実際、殺人事件が発生し、なんの因果か、難事件に巻き込まれてしまう。立ち塞がるいくつもの謎。名コンビ・片岡直次郎を助手に、太郎はその真相を推理する。(七十五羽の烏)「なめくじ長屋捕物さわぎ」新作2篇など本格短編とエッセーも収録。

 

引用元:(都筑道夫 、2003年、『七十五羽の烏~都筑道夫コレクション〈本格推理篇〉』)

 

 

【収録作品】
〈物部太郎&片岡直次郎シリーズ〉
1.「七十五羽の烏」 長編

 

〈キリオン・スレイシリーズ〉
2.「溶けたナイフ」 短編
3.「空腹幽霊」 短編

 

〈退職刑事シリーズ〉
4.「写真うつりのよい女」 短編
5.「四十分間の女」 短編

 

〈なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ〉
6.「百物語」 短編
7.「二百年の敵討ち」 短編

 

〈エッセー〉
8「七十五羽の烏」が出来るまで
9.推理小説と犯罪小説
10.私の推理小説作法
11.「なめくじ長屋捕物さわぎ」について1
12.「なめくじ長屋捕物さわぎ」について2

 

主要登場人物(「七十五羽の烏」)

物部 太郎(もののべ たろう)
デカい図体に反して、鳩のように優しい声質の青年。心霊探偵。
資産家の父親を納得させるため、物部太郎探偵事務所を立ち上げた。
本人曰く「先祖はものぐさ太郎」。

 

片岡 直次郎(かたおか なおじろう)
遮断機みたいな眉が目立つ男性。
物部太郎探偵事務所を発足させた張本人。
自らも探偵事務所において助手を名乗っている。

 

田原 早苗(たわら さなえ)
表情豊かな若い女性。
物部太郎探偵事務所に「伯父が幽霊に殺されるかも知れない」という依頼を持ち込む。
高い経済力を窺わせる服装をしており、住所は港区にある。

 

特徴

長編1作と短編6作(+エッセー5作)が収録された都筑道夫の豪華傑作選です。

 

いずれもトリックだけに光を当てて眺めると「これが往年の名作……?」と顎を落としそうになりますが、この本に収録されている作品の真髄はトリックにはありません

 

『黄色い部屋はいかに改装されたか?』で、著者がたびたび主張しているような"トリックよりロジック"に凝った推理小説が、ここでは実践されています。

 

 


堅実でともすれば地味なくらいにロジックを重視する姿勢は、やはりマニア向きと言えるかもしません。


緩いおふざけまじりの文章にも、ミステリの古典的作品を知っていなければまるで理解できないジョークが含まれています。

 

そういった観点においても、読み手によって評価が分かれる作品ではありますね。

 

この小説に向いている人

・ロジックを重視している。
・ミステリに読み慣れている。
・都筑道夫先生の代表作を読みたい。

 

この小説に向いていない人

・派手なトリックを期待している。
・動機を重視している。
・とりあえず有名作家の本を読みたい。

 

まとめ

1972年に発表に発表された『七十五羽の烏』を中心に据えた、都筑道夫先生の推理小説傑作選です。

 

作品を執筆するに際して意図したことなどを綴ったエッセーも収録されており、隅々まで行き届いた著者の意図を再確認することができます。

 

同氏のフォロワーも多く、例えば倉知淳は『星降り山荘の殺人』において、『七十五羽の烏』のとある特色を引用したうえで独自にアレンジしています(巻末の参考文献に『七十五羽の烏』を挙げています)

 

 

 

追記①この小説が好きな方にオススメ

法月綸太郎の冒険

作者は法月綸太郎。主役の探偵も法月綸太郎。
都筑道夫に通ずるところのある理論家だと個人的には思います。

 

 

虹果て村の秘密

作者は有栖川有栖。いわゆるジュブナイルミステリ

ステリの面白さはトリックだけではないと教えてくれる聖典です。