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【日常の謎】学園ミステリの詰め合わせ【放課後探偵団】 

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~某社作家陣による青春ミステリ~
『放課後探偵団』東京創元社

 

 

収録作品とあらすじ

1.似鳥鶏「お届け先には不思議を添えて」
映像研究会が発送した荷物が、相手先に到着したときにはすり替わっていた。しかし、中身をすり替える機会があったとは到底考えられない。
そんな不可解な謎に巻き込まれた葉山君は、名探偵の先輩・伊神さんに助けを求め……

 

※市立高校シリーズの短編です。
連作短編集『家庭用事件』に収録されているものと同一です。

 

2.鵜林伸也「ボールがない」

古豪の野球部が練習を終えたあとのこと。グラウンドに100球あるはずのボールが、いくら捜しても99球しか見つからない。
監督に残り1球を見つけるまで帰宅しないよう釘を刺された高校球児とマネージャーは……

 

※短編集『秘境駅のクローズド・サークル 』に収録されているものと同一です。


3.相沢沙呼「恋のおまじないのチンク・ア・チンク」

バレンタイン当日。学年集会を終えた生徒たちが教室に戻ると、教卓にチョコレートの山が積み上げられていた。
よく見ると、それらは生徒たちが用意していたものらしい。果たして生徒たちの荷物からチョコレートを抜き出した犯人は……

 

※酉乃初の事件簿シリーズの短編です。
連作短編集『ロートケプシェン、こっちにおいで』に収録されているものとほぼ同一です(一部修正が入ってるとのこと)。

 

4.市井豊「横槍ワイン」
映画制作同好会のメンバーは、暗い部屋で新作鑑賞会に臨んでいた。
ところがその最中、メンバーのひとりがワインを浴びるという事態が発生。"聴き屋"たる柏木君は図らずも謎解きに駆り出されることに…… 

 

※聴き屋シリーズの短編です。


5.梓崎優「スプリング・ハズ・カム」
学生時代に埋めたタイムカプセルを掘り起こすと、15年前の卒業式で勃発した放送室ジャック事件の犯行声明が入っていた。
正体不明の犯人は密室状況下でいかにして姿を消したのか。同窓会で一堂に会した放送部員たちは、嬉々として謎解き繰り広げ……

 

主要登場人物

【お届け先には不思議を添えて】
葉山(はやま)
美術部所属の男子生徒。シリーズの主人公兼語り手。
いわゆる"巻き込まれ体質"で、人の頼みはなかなか断れない難儀な性格。
下の名前は作中で明かされていない。


辻 霧絵(つじ きりえ)
映像研究会所属の女子生徒。放送委員も務める。
彼女もまたいわゆる"巻き込まれ体質"。
胸ポケットの手帳とペンがトレードマーク。


伊神 恒(いがみ こう)
元文芸部部長の男性。本シリーズの探偵役。
身長は180㎝以上あり、変人とも天才とも評される。
古武術を嗜んでいるらしい。

 

 

【ボールがない】
ケンジ
野球部の一年生。ポジションは投手。
いいカラダをしているにもかかわらず、根性は乏しい。

 

ツカサ
野球部の一年生。
語り手。

 

御園 治憲(みその はるのり)
野球部の一年生。ポジションは外野。
人並み外れた集中力を持つ。

 

三輪  葉子(みわ ようこ)
野球部のマネージャー。
勝ち気な性格をしている。

 

佐倉 菜々美(さくら ななみ)
野球部のマネージャー。
ため息が多い。

 


【恋のおまじないのチンク・ア・チンク】
須川 (すがわ)
男子生徒。本シリーズの語り手。
愛称は「ポチ」。

 

酉乃 初(とりの はつ)
女子生徒。卓越したマジシャンでもある。
愛称は「おニュー」。

 

 

【横槍ワイン】
柏木(かしわぎ)
男子生徒。語り手。
聴き屋として校内でも評判の人物。

 

津田(つだ)
男子生徒。舎弟体質の一年生。
どことなく犬を彷彿させる走り方をする。

 

 

【スプリング・ハズ・カム】
鳩村 雄二(はとむら ゆうじ)
元放送委員の男性。愛称は「ハト」。
状況に馴染むことに長けていることから「カメレオン」と評される。

 

支倉(はせくら)
元放送委員の女性。愛称は「はせっち」。
子どもっぽい性格を象徴するかのように、身長が低い。

 

 

特徴

東京創元社が推している若手(2010年当時)作家5名による学園ミステリ・アンソロジーです。まさに"粒揃い"という形容がふさわしい作品が揃っており、それぞれ毛色の違う作家の作品を探訪できる面白さもあります。

 

テーマが学園(学校)なので、それに伴い事件もこぢんまりとした規模ですが、解決に至るまでのロジックはなかなかのものです。ホワイダニット(なぜそうしたか)もよくできています。作品ごと素敵な挿絵も用意されていますね

 

総じて軽めのミステリを読みたい方、新たに自分の趣味に合う作家を発掘したい方には打ってつけのアンソロジーと言えるのではないでしょうか。

 

この小説に向いている人

いわゆる日常の謎が好きor興味がある。
・新たに自分の趣味に合う作家を発掘したい。
・主に学園(学校)が舞台の物語を読みたい。

 

この小説に向いていない人

・視覚的に地味なトリックは好きじゃない。
事件の規模が小さいと興味が湧かない。
・重厚なストーリーを求めている。

 

まとめ

全体的にライトなタッチの学園ミステリ・アンソロジーです。凄惨な殺人事件とは縁遠いミステリなので、若い読者に「こういったタイプのミステリもあるんだ」と知ってもらう良い教本にもなってくれるでしょう。

 

もちろん、年若い読者以外の方も十分に楽しめる内容だと思います。モラトリアム期間の青臭さや危うさに触れたい方であればなおのこと。ただし、サスペンスやアクションを求めてはいけません

 

また、編纂者の意図するところに推したい作家のコマーシャルがあるのでしょう。短編と短編の幕間に、2~3ページを割いて各作家の経歴や活動が綴られています(2010年当時)。あまり表に出てこない作家さんもいらっしゃるので、そういう方面に興味がある読者にもオススメです。

 

追記①この小説が好きな方にオススメ

放課後探偵団2

学園ミステリ・アンソロジー第二弾です。

春期限定いちごタルト事件

著者は米澤穂信。

謎過ぎる関係の男女コンビが活躍する日常ミステリです。

 

 

 

虹果て村の秘密

作者は有栖川有栖。いわゆるジュブナイルミステリ

ステリの面白さはトリックだけではないと教えてくれる聖典です。