~「犯人は〇〇だよ」から始まる連作短編集~
麻耶雄嵩『さよなら神様』文藝春秋
あらすじと収録作品
【あらすじ】
「犯人は〇〇だよ」。クラスメイトの鈴木太郎の情報は絶対に正しい。やつは神様なのだから。神様の残酷なご託宣を覆すべく、久遠小探偵団は事件の操作に乗り出すが・・・・・・。衝撃的な展開と後味の悪さでミステリ界を震撼させ、本格ミステリ大賞に輝いた超話題作。他の追随を許さぬ超絶推理の頂点がここに!
引用元:文藝春秋BOOKS
(https://books.bunshun.jp/list/browsing?num=9784163901046)
【収録作品】
1.「少年探偵団と神様」
2.「アリバイくずし」
3.「ダムからの遠い道」
4.「バレンタイン昔語り」
5.「比度との対決」
6.「さよなら、神様」
主要(?)登場人物
子どもたち
桑町 淳(くわまち じゅん)
小学五年生。≪久遠小探偵団≫の一員。
担任教師の美旗進に恩を感じている。
本作品の語り手。
鈴木 太郎(すずき たろう)
"神様"。容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能。
当然のようにクラスの女子にはモテモテ。
事件の犯人を教えてくれるのはもちろん、テストのヤマも快く教えてくれる。
新堂 小夜子(しんどう さよこ)
桑町の幼馴染その1。社交的な性格で容姿に優れる。
オペラ歌手になれそうな甘いソプラノボイスの持ち主。
何かと桑町のことを気にかけている。
市部 始(いちべ はじめ)
桑町の幼馴染その2。≪久遠小探偵団≫の団長。
頭脳明晰で運動神経もそれなりだが、容姿は十人並み。
大の推理小説好きで、桑町淳曰く「ミステリオタク」。
丸山 一平(まるやま いっぺい)
小柄で口の悪い少年。≪久遠小探偵団≫の一員。
父母に恵まれ、裕福な家庭で育ってきた。
推理小説好きであり、乱歩賞作家・仁木悦子の大ファンでもある。
比度 優子(ひど ゆうこ)
醤油顔の霊感少女。≪久遠小探偵団≫の一員。
市部を好いており、自称「市部の将来の恋人」。
とある理由から"神様"とは距離を置いている。
上林 泰二(うえばやし たいじ)
おとなしい少年。≪久遠小探偵団≫の一員。
父子関係は良好で、父親のことを「パパ」と呼ぶ。
桑町曰く「良い奴」。
大人たち
美旗 進(みはた すすむ)
久遠小学校の教師。桑町のクラスの担任でもある。
身長は2メートル近くあり、一部の児童に"イエティ"と呼ばれている。
年齢は二十代半ば。生真面目で優しい性格。
青山 孝明(あおやま たかあき)
霞ヶ丘小学校の体育教師。
美旗進の高校時代のライバルでもあった。
在学当時、柔道での実力は伯仲していた。
上林 護(うえばやし まもる)
上林泰二の父親。
小説1行目にして"神様"に犯人であると名指しされる。
桑町曰く「とても人を殺めた人間には見えない」。
丸山 聖子(まるやま せいこ)
丸山一平の母親。32歳。
PTAの役員でもあり、婦人会の会長を務めている。
上津 里子(こうづ さとこ)
55歳の女性。夫を亡くして以来、広い家でひとり暮らし。
"喜六"という名の犬を飼っている。
榊原 英美里(さかきばら えみり)
26歳の女性。
とある会社でOLをしている。
特徴
第15回本格ミステリ大賞受賞作。
児童書に擬態したトラウマメイカー『神様ゲーム』の続編にあたる連作短編集です。
もっとも、"神様"こと鈴木太郎が登場する点を除けば物語に繋がりはなく、本作から読み始めてもまったく問題ありません。
本作の特徴はなんといっても、各篇の1行目で「犯人は〇〇だよ」と"神様"に明かされること。
ややもすると倒叙ミステリに見えなくもありませんが、あくまで事件の"謎"を究明するのは語り手の桑町淳です。
例えば、犯人と目された人物にアリバイがあったら"謎"ですよね。
犯人が最初に明かされるスタイルはいまとなっては珍しくないものの、そこはやはり麻耶雄嵩御大の作品です。
本作の白眉というべき「比度との対決」では、犯人が判明しているからこそ生じる陥穽※1をうまく描き切っています。
※1ネタバレ防止のため反転
この小説に向いている人
・ロジックを重視している。
・胸糞悪い話が好き。
・ある程度ミステリに読み慣れている。
この小説に向いていない人
・登場人物の描写にリアリティを求めている。
・フーダニット(誰が犯人か?)を重視した作品を読みたい。
・胸糞悪い物語は読みたくない。
まとめ
小学生らしくない小学生が、神様の残酷な託宣に立ち向かう物語。
血も涙もない、人間関係のドロドロが前面に押し出された作風なので、合わない方にはとことん合わない作品でしょう。
謎解きの部分に関してもクオリティは高いものの、ある程度ミステリに読み慣れていないとその面白さを感じられないかもしれません。
(いくつかの事件の結末に至っては、消化不良すら覚える可能性があります)
概して読者を選ぶ小説ではありますが、刺さる人にはぶっ刺さる作品ですので、ちょっとでも「興味がある」という方はぜひ手に取ってみてください!
コミカライズ
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このような取り扱いについて、色々とビジネス上の都合があるみたいですが、何はともあれ作品自体はきれいに完結しています。
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