本格ミステリ紹介所

――面白い本格ミステリを紹介する場所――

立派な洋館が景気よく燃えます【紅蓮館の殺人】

~タイムリミットに追われる令和の"館"もの~
阿津川辰海『紅蓮館の殺人』講談社

 

 

 

あらすじ

 

山中に隠棲した文豪に会うため、高校の合宿を抜け出した僕と友人の葛城は、落雷による山火事に遭遇。
救助を待つうち、館に住むつばさと仲良くなる。
だが翌朝、吊り天井で圧死した彼女が発見された。
これは事故か、殺人か。
葛城は真相を推理しようとするが、住人や他の避難者は脱出を優先するべきだと語り――。
タイムリミットは35時間。
生存と真実、選ぶべきはどっちだ。

 

引用元:講談社BOOK倶楽部
(https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000324075)

 

 

忙しい人向け(三行)

ミステリ作家の館で
探偵と元探偵が
"探偵"の生き様を論じる

 

特徴

本格ファンの心くすぐるタイトルを冠した阿津川辰海の長編です。


各章のタイトルに『【館焼失まで〇時間〇〇分】』というような副題が添えられており、サスペンス色も濃くなっています。


また、作者が初期作品から描き続けている"探偵とは?"というモチーフは本作でも健在です。

 

 

「葛城にとって、探偵とはなんだ?」
抽象的な議論に逃げようとしたのは、自分が情けなかったからだ。
「決まっている」
彼の答えには迷いがなかった。
「生き方だよ」

 

引用元:(紅蓮館の殺人、2019年、講談社)

 

登場人物

葛城 輝義(かつらぎ てるよし)
高校二年生。推理作家・財田雄山の大ファン。
警察にも"探偵"として情報提供した経験がある。
他人の嘘を見抜く超人的な能力を備えている。

 

田所 信哉(たどころ しんや)
高校二年生。推理作家・財田雄山のファン。
かつては"探偵"を志していた。
現在は葛城の助手を務めている。

 

飛鳥井 光流(あすかい ひかる)
保険会社で調査員をしている女性。
意志の感じられない疲れた目をしている。
元"探偵"

 

財田 雄山(たからだ ゆうざん)
著名な男性ミステリ作家。97歳。
豪奢な洋館の持ち主。

 

小出(こいで)
ボーイッシュで短期な性格の女性。
髪はショートにしている。
一人称は"俺"。

 

この小説に向いている人

クローズド・サークルが好き。
・高校生が主役の物語が好き。
・タイムリミット・サスペンスが好き。

 

この小説に向いていない人

・"探偵"の役割にあまり興味がない。
・ませた若者は好きではない。
・コミカルなキャラクターが苦手。

 

まとめ

"探偵とは何か?"を問う作品です。

 

ともすれば、高校生探偵の"青臭さ"が鼻につく場合もあるかもしれません。

 

ただし、肝心のミステリの部分はしっかりと作り込まれていますよ!

 

追記①この小説が好きな方にオススメ

蒼海館の殺人

続編です。

体育館の殺人

青崎有吾のデビュー作。
こちらも"館"を冠しています。

 

密室黄金時代の殺人

作者は鴨崎暖炉
雪の"館"で連続殺人が起きます。
全体的にライトな雰囲気です。
クローズド・サークルものでもあります。

 

 

屍人荘の殺人

作者は今村昌弘
学生が主役の作品です。