〜平成のエラリー・クイーンのデビュー作〜
青崎有吾『体育館の殺人』東京創元社
あらすじ
風ヶ丘高校の旧体育館で、放課後、放送部の少年が刺殺された。外は激しい雨で、密室状態の体育館にいた唯一の人物、女子卓球部部長の犯行だと警察は決めてかかる。卓球部員・柚乃は、部長を救うために、学内一の天才と呼ばれている裏染天馬に真相の解明を頼んだ。アニメオタクの駄目人間に――。
引用元:東京創元社公式サイト
(http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488443115)
主要登場人物
裏染 天馬(うらぞめ てんま)
高校2年生。部室棟にこっそり住み着いている。
中間テストで全教科満点をとった天才。
袴田 柚乃(はかまだ ゆの)
高校1年生。卓球部所属。
いわゆる"読者の代理人"的存在。
佐川 奈緒(さがわ なお)
高校2年生。卓球部部長。
文武両道の優等生。
向坂 香織(さきさか かおり)
高校2年生。新聞部部長。
裏染天馬とは幼馴染の関係にある。
特徴
平成のエラリー・クイーンこと青崎有吾のデビュー作。〈裏染天馬シリーズ〉の第1作目でもあります。
全体的にライトな雰囲気ではありますが"謎"と"解決"が丁寧に作られた作品です。現場に残されたひとつの"手がかり"をもとに推理を展開していく様子は、新人作家の作品として水際立っていますね。
ただし、探偵役がことあるごとに"アニメ知識"を口ずさむので、こういったキャラクターが苦手な方はご注意ください。
"読者への挑戦"も付いています!
※追記:単行本の記述に見られた瑕疵が文庫で修正されているので、文庫版を読むことを強く推奨します。
この小説に向いている人
・ロジックを重視している。
・アニメの知識が豊富(特に男性向け作品)。
・コミカルなキャラクターが好き。
この小説に向いていない人
・洗練された文章表現を求めている。
・重厚なストーリーを期待している。
・コミカルなキャラクターが苦手。
まとめ
作者が"平成のエラリー・クイーン"と喧伝されるだけあって、緻密なロジックが売りのミステリです。
消去法で犯人を限定していく過程はまさに"痺れる"のひとこと。
"読者への挑戦"が挿入されている点も好印象です。
追記①この小説が好きな方にオススメ
水族館の殺人
続編です。
ノッキンオン・ロックドドア
同著者の作品。
探偵×探偵のコンビが活躍します。
月光ゲーム
有栖川有栖のデビュー作です。
当時は"日本のエラリー・クイーン"という宣伝文句で売り出されていました。
紅蓮館の殺人
作者は阿津川辰海。
こちらはタイムリミットに追われるミステリです。
密室黄金時代の殺人
作者は鴨崎暖炉。
全体的にライトな雰囲気です。
放課後探偵団
東京創元社が推している若手(2010年当時)作家5名による学園ミステリ・アンソロジー。
いわゆる日常ミステリを集めた短編集です。