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【令和5年版】いま話題! オススメのジュブナイルミステリ10選

ジュブナイルミステリとは?
主として若い読者に向けられた冒険物語です。
少年少女たちが謎解きや試練を通じて成長し、ときに大人の黒い世界を垣間見る……
本記事ではその代表的な作品を探っていくことにします。


※もちろん大人が読んでも十分に面白い作品です!

 

 

 

 

 

① 虹果て村の秘密


本格ミステリ入門といえばこれ!


刑事志望の少女とミステリ作家志望の少年が、虹果て村で"密室殺人"に遭遇します。


扱われる機械(物理)トリックはシンプルなものの、エレガントに決まるロジックには思わず拍手を送りたくなりますね。


道路建設の問題を善悪の二項対立で片づけない描き方もGood。


ミステリの楽しさはトリックだけではないと教えてくれる貴重な一冊です。

 

詳細記事↓

 

② ほうかご探偵隊

小学校で起きる"連続消失事件"を扱ったミステリです。


消えてなくなるのは「変哲もない風景画」、「飼育小屋のニワトリ」、「招き猫型の募金箱」等々、脈絡のないラインナップ。


"消失"を考えるだけでなく"なぜ消失したのか"を含めて考える姿勢に謎解きの醍醐味がたっぷり詰まっています


総じて爽やかな読み心地であり、"殺人事件"が起きなくとも良質なミステリになり得ることを証明する一冊です。

 

 

③ でぃすぺる

令和5年に発売されたばかりの作品。


小学生たちが"七不思議"に挑むホラー風味なミステリです。


誰が信用できて、誰が信用できないのか


ホラーとミステリが絶妙のバランスで調和し、緊張感のあるエンターテイメントに仕上がっています。

 

④ ぐるぐる猿と歌う鳥

父親の転勤により、北九州に引っ越した小学生の高見 森(たかみ しん)。


同じ社宅に住む子どもたちと仲良くなるにつれ、彼らがある秘密を共有していることに気づき……


孤立、衝突、謎、冒険、葛藤、友情


爽快でありながらほろ苦さが同居する、大人には見えづらい世界の物語です。

 

⑤ びっくり館の殺人

〈館シリーズ〉の第8作目にあたりますが、順番を気にせずに読める作品です。


全編を不気味な雰囲気が貫いており、怪奇小説に近い味わいを楽しめます。


挿絵がたくさん収録されているのも嬉しい限り。


ただし、内容はかなり刺激的といえるでしょう。


児童書に"毒"があっても許されるべきですが、この作品は"狂気"(軽いネタバレのため反転)たっぷりですので……

 

⑥ 月光亭事件

〈狩野俊介シリーズ〉の記念すべき第1作目です。

 

少年探偵が主役に据えられている点を除けば、オードソックスなミステリといえるかもしれません。

 

しかしながらオードソックスであるがゆえに、ミステリの"型"にじかに触れることができるのも事実。

 

年若い方々への"英才教育"にいかがでしょうか。

 

⑦ そして五人がいなくなる

〈夢水清志郎シリーズ〉のこれまた第1作目です。

 

元大学教授の清志郎(きよしろう)と隣家に住む亜衣(あい)、真衣(まい)美衣(みい)の三姉妹が活躍するミステリです。

 

心地よいユーモアと脱力系の探偵役が癖になります。

 

 

 

それは四月の一日――よく晴れたエイプリル・フールのこと。
わたしたちの町に、名探偵が引っ越してきたの!

 

引用元:『そして五人がいなくなる』、1994年、講談社)

 

 


引用したのは冒頭の一文。語り手は三姉妹の長女である岩崎亜衣(いわさき あい)です。

 

親しみやすい文体も魅力のひとつとなっていますね。

 

⑧ 魔王城殺人事件

「ゾンビ」やら「デオドロス城」やら文章に対する横文字の配合が絶妙で、テンポよく読み進めることができるミステリです。

 

オノマトペが多用されている点も、そういった傾向に一役買っているといえるでしょう。

 

"文章に行き詰まることがない=謎解きに集中できる"です。

 

小説に読み慣れた"物知り"からすれば味気ない文章に思えるって?


知りません。童心に戻ってください。

 

⑨ 三姉妹探偵団

放火によって家を失ってしまった三姉妹。焼け跡からは女性の遺体が発見され、出張中の父親は殺人容疑で指名手配に。


父親の無実を証明するため三姉妹は探偵業を始め……という壮絶な展開に端を発する物語です。


なんと現在までに26冊もの文庫が販売されている、非常に息の長いシリーズでもあります。


注意点としてはネット通販で若い巻を中古購入すると、旧版のイラスト(私は馴染みがあって好きです)の文庫が届く場合があることでしょうか。

 

出典:赤川次郎『三姉妹探偵団』講談社、旧版より

 

ナウなヤングの趣味ではない可能性が高いので、一応注意喚起をば。

 

⑩ 神様ゲーム

児童書に擬態したトラウマメイカー


同じく少年少女向けの島田荘司『透明人間の納屋』や、綾辻行人『びっくり館の殺人』も相当ですが、それらを超越するエグさです。


ジュブナイルとはいえど、手心は不要ということでしょうか。


散々な書き方をしましたが、ミステリとしても小説としても非常に面白い作品ではあります。

 

番外編:名探偵シャーロック・ホームズ 10歳までに読みたい名作ミステリー

子ども向けの本当に読みやすい翻訳です。

 

活字慣れしてない子にも、ミステリの布教のため面白さを知っていただくためにぜひ手にとっていただきたい作品のひとつです。

 

イラストが豊富なのも嬉しいところ。私が幼い頃にこの作品に出合っていたら、きっと狂喜乱舞していたことでしょう。

 

……シャーロキアンで原理主義者?



 

 

「そんなホームズは贋作だ!」などと叫ぶ子どもがいたら恐ろしくて夜も眠れません。


それはそうと、小説家で翻訳者の村上春樹さんが『グレート・ギャツビー』のあとがきで、こんなことを述べていた気がするので記しておきます。(記憶が確かならば……)

 

「何度でも新訳してアップデートできるのが、翻訳書の強み」

 

終わりに

ほかにも紹介したい作品が多数あるのですが、あまり載せすぎると的が絞れなくなるというか、これから作品に手を伸ばそうという方の意欲を削ぎかねません

 

そのため上記の10作(+1作)に絞らせていただきました。

 

特に古典の領域に足を突っ込んでいる国内作品に関しては、断腸の思いでここでは紹介しないこととしています。

 

その点をご理解いただけますと幸いです。

 

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