本格ミステリ紹介所

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シリーズ最高傑作と名高い"館"【時計館の殺人】

~十角館と双璧をなす作者の代表作~
綾辻行人『時計館の殺人』講談社

 

 

 

 

あらすじ

 

鎌倉の外れに建つ謎の館、時計館。角島(つのじま)・十角館の惨劇を知る江南孝明(かわみなみたかあき)は、オカルト雑誌の“取材班”の一員としてこの館を訪れる。館に棲むという少女の亡霊と接触した交霊会の夜、忽然と姿を消す美貌の霊能者。閉ざされた館内ではそして、恐るべき殺人劇の幕が上がる!

 

引用元:講談社BOOK倶楽部
(https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000206005)

 

主要登場人物

島田 潔(しまだ きよし)
推理作家。ペンネームは鹿谷 門実(ししや かどみ)。
名字は推理作家の"島田荘司"から、名前は≪御手洗シリーズ≫の探偵"御手洗潔"からとっているとのこと。

 

江南 孝明(かわみなみ たかあき)
稀譚社の新米編集者。
編集部の企画で「時計館」を訪れることになる。

 

内海 篤志(うつみ あつし)
稀譚社写真部に所属するカメラマン。
中肉中背。薄く口髭を蓄え、髪は長く伸ばして後ろで束ねている。

 

小早川 茂郎(こばやかわ しげお)
稀譚社が発行する雑誌『CHAOS』の副編集長。
でっぷりとした身体の中年男性。

 

古峨 由季弥(こが ゆきや)
「時計館」の現在の当主。
精巧な日本人形を思わせる少年。

 

伊波 紗世子(いなみ さよこ)
「時計館」の管理責任を担っている。
長身の女性。

 

田所 嘉明(たどころ よしあき)
「時計館」の使用人。
猫背気味の小男。

 

光明寺 美琴(こうみょうじ みこと)
霊能者。
"仕事"の際はエキセントリックな衣装を身にまとう。

 

瓜生 民佐男(うりゆう みさお)
W**大学超常現象研究会の会長。
色の白いほっそりとした面立ちの好青年。
頭の回転が速そうな、歯切れの良い話し方をする。

 

樫 早紀子(かたぎ さきこ)
W**大学超常現象研究会会員。
ワンレングスの長い髪がよく似合う美人

 

河原崎 潤一(かわらざき じゅんいち)
W**大学超常現象研究会会員。
肌は日に灼けていて、髪は短く刈っている。

 

新見 こずえ(にいみ こずえ)
W**大学超常現象研究会会員。
ショートヘアの女性。狐顔。

 

渡辺 涼介(わたなべ りょうすけ)
W**大学超常現象研究会会員。
ずんぐりとした体格に丸顔。眼鏡をかけている。

 

特徴

新装版は上下巻構成

 

"新本格ミステリ"を象徴する作品群≪館シリーズ≫の第5作目です。

 

単体としても読めなくもありませんが、やはり『十角館の殺人』、『水車館の殺人』、『迷路館の殺人』くらいは先に読んでおいたほうがいいでしょう。

 

本作は過去作の登場人物にスポットライトが当てられていますし、何よりも間接的なネタバレを防ぐことができます。

 

 

 

※画像は『時計館の殺人』にインスピレーションを与えたとされる鎌倉の古我邸。実は「時計館」の当主の姓に注目してみると……

古我邸 綾辻行人 時計館 鎌倉 そして誰もいなくなった

出典:古我邸公式サイト,https://kamakura-koga.com/

 

 

 

物語の舞台は神奈川県の鎌倉市です。

作中にも「白山神社」や「散在ガ池」など実在する場所が登場します。鎌倉に縁がある方なら、読んでいて嬉しくなれるポイントのひとつではありますね。

 

 

ちなみに「時計館」のモデルとなった古我邸は、テレビ朝日放映のドラマ版『そして誰もいなくなった』のロケ地にもなりました。

 

(ドラマの評判は上々ですが、原作を忠実に再現しているわけではないので苦手な方はご注意を)

 

 

 

 

 

この小説に向いている人

≪館シリーズ≫の雰囲気が好き。
・建物の図面やトリックの図解が好き。
・トリックを重視している。

 

この小説に向いていない人

登場人物が多いミステリは苦手。
・オカルトが嫌い。
・長い小説を読むだけの時間がない。

 

まとめ

鎌倉を舞台に据えた綾辻行人の"館"もの。真相を知ったとき、世界が一変する"あの"感覚を味わえます。このカタルシスは館シリーズでも随一です。

 

読み返せば"伏線"がそこここに張られていることに気づかれますし、描写ひとつをとっても作者の工夫を感じられます。

 

再読しても面白い、ある意味"時間泥棒"といえる作品かもしれません。

 

注意事項

講談社あるあるですが、私が再読用に購入した電子書籍(上下合本版)には「解説」が付いていませんでした。

 

皆川博子さん、米澤穂信さんの「解説」を期待している方は購入する媒体にお気をつけください。

 

追記①この小説が好きな人にオススメ

殺人方程式

綾辻行人にしては珍しい機械(物理)トリックが炸裂する長編です。

「本当は書きたくなかったが、新人時代で断れたなかった」との逸話があります。

 

 

スイス時計の謎

作者は有栖川有栖短編集
作家アリスシリーズ(火村英生シリーズ)です。
表題作「スイス時計の謎」は、腕時計という手がかりからの犯人限定が見事です。

ミステリークロック

作者は貴志祐介
短編の「ゆるやかな自殺」と中編「ミステリークロック」が収録されています。

 

 

和時計の館の殺人

作者は芦辺拓
和時計に詳しくなれます。