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綾辻行人渾身の機械(物理)トリックが炸裂するミステリ【殺人方程式 切断された死体の問題】

~なぜ死体を切断する必要があったのか?~
綾辻行人『殺人方程式 切断された死体の問題』講談社

 

 

 

あらすじ

 

新興宗教団体の教主が殺された。儀式のために籠もっていた神殿から姿を消し、頭部と左腕を切断された死体となって発見されたのだ。厳重な監視の目をかいくぐり、いかにして不可能犯罪は行われたのか。2ヵ月前、前教主が遂げた奇怪な死との関連は? 真っ向勝負で読者に挑戦する、本格ミステリの会心作!

 

引用元:『殺人方程式 切断された死体の問題』、2005年、講談社

 

 

主要登場人物

明日香井 叶(あすかい きょう)
警視庁刑事部捜査一課の刑事。26歳。
温厚な性格をしており、暴力が大の苦手。

 

明日香井 響(あすかい きょう)
叶の双子の兄。哲学科の大学生(6回生)。
最近はヘヴィメタを嗜んでいる。

 

明日香井 深雪(あすかい みゆき)
叶の妻。
低血圧で朝に弱い。

 

明日香井 ミヤコ(あすかい みやこ)
叶と響の祖母。89歳。
明日香井一族の最大の権力者。

 

尾関 弘之(おぜき ひろゆき)
M署の刑事。
警部補に昇進したばかり。

 

芳野 恵介(よしの けいすけ)
M署の刑事。
のっぺりとした童顔。

 

特徴

〈館シリーズ〉や〈囁きシリーズ〉とは趣を異にする、綾辻行人の〈殺人方程式シリーズ〉

 

執筆を依頼されたのがデビューの翌年らしく、まだ断れる立場になかったとのことです。

 

とはいえ、「こういう綾辻行人もいいじゃないか!」と唸らされるミステリではあります。

 

本作品について、作者は以下のように回顧していますね。

 

 

 

本音をいっちゃうと、あんまり気が進まなかったんですよ、これを書くの。(中略)講談社でこの作品を二次文庫化したとき、十年以上ぶりにゲラを読まなきゃいけなくて、途中まではほとんど羞恥プレイをさせられているような気分でね、いやでいやで仕方なかったんです。ところが解決編まで読み進めると、「おお、なるほど」って、けっこう自分で感心したりもして(笑)。

 

引用元:『ミステリーの書き方』、2005年、幻冬舎

 


手前味噌も納得の練られた小説だと思います!

 

ちなみに引用元の『ミステリーの書き方』ですが、創作活動とは無縁な私でも楽しめる一冊でした。

 

ミステリファンの方にオススメです。

 

 

この小説に向いている人

・機械(物理)トリックが好き。
・トリック等の図解が好き。

ホワイダニット(なぜそうしたか?)を重視している。

 

この小説に向いていない人

・ホラー色の強い物語を期待している。
・数学や物理学による説明が苦手。
・物語に幻想的な雰囲気を求めている。

 

まとめ

綾辻行人らしくないと評されがちな本作ですが、伏線を丁寧に回収する手際はさすがのひとこと。

 

登場人物による「主要な問題点の整理」もあるので、能動的な"謎解き"も楽しみやすいですね。

 

ただし、幻想的な雰囲気やホラー要素を期待すると肩透かしを食うかもしれません

 

追記①この小説が好きな方にオススメ

鳴風荘事件 殺人方程式2

続編です。