~エンバーミングに惹かれるミステリ~
山口雅也『生ける屍の死』東京創元社
新装版(上下巻構成)光文社
あらすじ
ニューイングランドの片田舎で死者が相次いで甦った!
この怪現象の中、霊園経営者一族の上に殺人者の魔手が伸びる。死んだ筈の人間が生き還ってくる状況下で展開される殺人劇の必然性とは何なのか?
自らも死者となったことを隠しつつ事件を追うパンク探偵グリンは、果たして肉体が崩壊するまでに真相を手に入れることができるか?
引用元:東京創元社ウェブサイト
(http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488416010)
主要登場人物
スマイリー・バーリイコーン
霊園の経営者。
病に伏しており、死期が近いとされる。
フランシス(綽名:グリン)
スマイリーの孫。
死者となったことを隠しつつ事件を追う。
特徴
山口雅也が贈るデビュー作は、死者が甦る異様な世界を舞台にしながらも、本格ミステリとしての鋭い輝きを放つ一冊です。
「死者が甦る世界で何故殺人が行われるのか?」
殺人の意義さえ希薄に感じられる状況下で、犯人がそれでもなお手を染める理由とは何か。特殊な設定が生むこの逆説的な謎は、本作の核心に迫るものです。
その答えは予想を超える鮮やかさをもって、明かされることとなります。
※すべての"死者"が蘇るわけではありません。
この作品に向いている人
・海外の古典ミステリが好き。
・宗教や葬送に興味がある。
・いわゆる"特殊設定ミステリ"が好き。
この作品に向いていない人
・長い作品は読みたくない。
・登場人物が多い作品は苦手。
・"蘇り"にSFらしい擬科学的な描写を求めている。
まとめ
本作では“死”というテーマを巡り、医学や宗教といった多角的な見地からの考察が丁寧に織り込まれています。
一見すると重厚で難解な内容に思えるかもしれませんが、山口雅也氏らしい軽妙な会話劇が要所に配されており、読み手を退屈させることはありません。
ただし、文体には独特のクセがあるため、手に取る前に一度試し読みをしてみることを推奨します。