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プリーツスカートに詳しくなれるミステリ【マツリカ・マトリョシカ】

~思春期男子のリビドーは宇宙~
相沢沙呼『マツリカ・マトリョシカ』KADOKAWA

 

 

 

 

あらすじ

 

校内の「開かずの扉」の秘密に、高校生の柴山と謎の美女マツリカが挑む!
学校の怪談『顔の染み女』を調べていると、別の『開かずの扉の胡蝶さん』の噂が柴山の耳に入る。その部屋で、トルソーを死体に見立てた殺人(?)事件が発生。クラスメイトと柴山が、二重の密室の謎に迫る!

 

引用元:KADOKAWAオフィシャルサイト

(https://www.kadokawa.co.jp/product/321909000262)

 

忙しい人向け(三行)

タイムリミットまでに

密室の謎を解き
真犯人を見つけ出す必要あり

 

特徴

マツリカシリーズの第3作目長編です。


舞台は高校で今回は"密室"もの。


ただし"密室"とはいっても、殺人事件は起きません。


作中に事件の状況を端的に説明するセリフがあるので引用しますね。

 

 


「さて、舞台となった第一美術準備室は、推理小説的な表現をするならば、一種の密室状況だったという。扉と窓には錠が施され、内扉は戸棚に塞がれており、人間が通ることはできない。鍵は職員室に預けられていたけれど、試験準備期間という特殊な環境の影響下で、記録に残さず持ち出すことは不可能であり、また持ち出した人間も記録に残っていない」

 

引用元:(マツリカ・マトリョシカ、2020年、KADOKAWA)

 


学校という環境特有の制約です。


この"密室"で、次のような奇怪な事件が起こります。

 

 


「室内には、制服を着せられていたトルソーが倒れていた。この制服というのは、すなわち、ブラウス、ネクタイ、ニットベスト、プリーツスカートで、衣類の特徴的なほつれ具合や擦れ具合、ブラウスのポケットに自転車の鍵が入っていたこと、なによりタグの名前などを当人が念入りに確認したことから、盗まれた七里観月の制服に間違いないと断定された。また、過去の事件をなぞるように、傍らにはカッターが、周囲には蝶の標本が散らばっていた」

 

引用元:(マツリカ・マトリョシカ、2020年、KADOKAWA)

 


この謎を巡り、登場人物たちは奮闘します。


もちろん、奮闘しなければならない切実な理由もありますよ。

 

登場人物

柴山 祐希(しばやま ゆうき)
二年生。語り手
マツリカに「柴犬」と呼ばれ、こき使われている。

 

マツリカ
妖艶な美少女。余人の及ばない洞察力を持つ。
高校の向かいにある廃墟ビルから、双眼鏡で学校を観察している。

 

高梨 千智(たかなし ちさと)
二年生。写真部所属。
怪しげな関西弁を操る。

 

松本 まりか(まつもと まりか)
"一年生"。写真部所属。
学校の噂話や怪談の類に詳しい。

 

野村 直樹(のむら なおき)
三年生。美術部部長。
線の細いイケメン。

 

春日 麻衣子(かすが まいこ)
一年生。美術部所属。
小柄で毒舌。

 

七里 観月(ななさと みづき)
三年生。女子テニス部のエース。
モデルのような体型。

 

深沢 雪枝(ふかざわ ゆきえ)
三年生。テニス部所属。
七里観月の親友。

 

この小説に向いている人

・密室が好き。
・学校が舞台の作品が好き。
・ロジックを重視している

 

この小説に向いていない人

・殺人事件が起きないと興味が持続しない。
視覚的に派手なトリックを求めている。
・思春期らしいナイーブな心理描写が苦手。

 

まとめ

シリーズ3作目にして初の長編作品です。


前作を読んでいなくても、推理劇は十分に楽しめます。


登場人物の成長であったり、ストーリーの深いところまで理解したい場合は、先に前作を読んだほうがいいでしょう。


もちろん、本書を先に手に取って遡るようにして読み進めるのも大アリです!

 

参考までにシリーズを列挙しておきます。

マツリカシリーズ第1作

相沢沙呼『マツリカ・マジョルカ』KADOKAWA

短編集
柴山祐希とマツリカの出会いが描かれています。

マツリカシリーズ第2作

相沢沙呼『マツリカ・マハリタ』KADOKAWA

短編集
何とは言いませんが、色々とパワーアップしています。

 

追記①この小説が好きな方にオススメ

medium 霊媒探偵城塚翡翠

同じ作者(相沢沙呼)の作品。
「すべてが、伏線。」という惹句で宣伝されていました。
第20回本格ミステリ大賞。

 

放課後探偵団

東京創元社が推している若手(2010年当時)作家5名による学園ミステリ・アンソロジー

相沢沙呼先生も執筆陣の一員です。