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アリバイ崩しに特化した連作短編集【アリバイ崩し承ります】

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~時計屋万能説~
大山誠一郎『アリバイ崩し承ります』実業之日本社

 

 

 

 

 

 

あらすじと収録作品

【あらすじ】

 

美谷時計店には「時計修理承ります」とともに「アリバイ崩し承ります」という貼り紙がある。
難事件に頭を悩ませる新米刑事はアリバイ崩しを依頼する。
ストーカーと化した元夫のアリバイ、郵便ポストに投函された拳銃のアリバイ……
7つの事件や謎を、店主の美谷時乃は解決できるのか!?


引用元:アリバイ崩し承ります|実業之日本社
(https://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-55548-5)

 

【収録作品】
1.「時計屋探偵とストーカーのアリバイ」

2.「時計屋探偵と凶器のアリバイ」

3.「時計屋探偵と死者のアリバイ」

4.「時計屋探偵と失われたアリバイ」

5.「時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ」

6.「時計屋探偵と山荘のアリバイ」

7.「時計屋探偵とダウンロードのアリバイ」

 

主要登場人物

美谷 時乃(みたに ときの)
時計屋の店主。二十代半ばの女性。
いつも時計修理用の作業着を着ている。
小柄で、白兎を思わせる顔立ちで、特に頼りになりそうには見えない。
アリバイ崩しの名手。


"僕"
語り手。苗字名前ともに不明。
県警本部捜査一課に異動したばかりの新米刑事。
時乃への相談は"守秘義務違反"にあたるため、手柄は全部自分のものにしている。
そのため、捜査一課内ではアリバイ崩しの名手と思われている。

 

特徴

収録された作品すべてが「アリバイ崩し」を描く、連作短編集です。

 

時計屋の女性店主が探偵役となり、巧妙なアリバイの裏を暴いていく姿が描かれます。彼女は自分が「アリバイの問題をもっともよく扱える」と自負しています。

 

 

「アリバイがあると主張する人は、何時何分、自分はどこそこにいたと言います。つまり、時計がその主張の根拠となっているのです」
「まあ、そうですね」
「ならば、時計屋こそが、アリバイの問題をもっともよく扱える人間ではないでしょうか」
 

引用元:(アリバイ崩し承ります、2019年、実業之日本社)

 

 

すごい暴論ですね(誉め言葉)


語り口は軽快で、事件は一問一答形式で解き明かされるため、心地よいリズムで読み進めることができます。

 

一方、物語性や登場人物の内面に踏み込む描写は控えめです。本作は、純粋に「アリバイ崩し」の快感を味わうための作品なのでしょう。

 

この小説に向いている人

いわゆる"アリバイ崩し"が好き。
・テンポよく進む小説が好き。
・説明的な軽い文体が好き。

 

この小説に向いていない人

重厚なストーリーを期待している。
・視覚的に派手なトリックを求めている。
・動機を重視している。

 

まとめ

時計屋の店主が安楽椅子探偵を務めるミステリです。

物語の流れは極めてシンプルで、


1.語り手である"僕"が時計屋を訪れる。
  ↓
2.店主に事件を相談する。
  ↓
3.店内で静かに事件が解決される。

 

上記の三段構成をひたすら繰り返す内容となっています。これを「単調」と感じるか、「安定した様式美」と捉えるかは、読者次第でしょう。

 

いずれにしても「アリバイ崩し」という知的興奮を味わいたい方には、この作品がぴったりです。

 

コミカライズ

収録作品は以下の3編です。

「時計屋探偵とストーカーのアリバイ」

「時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ」

「時計屋探偵と山荘のアリバイ」

 

追記①この小説が好きな方にオススメ

時計屋探偵の冒険

続編です。
引き続き"アリバイ崩し"を摂取できます。

 

密室蒐集家

同じ作者の作品。
こちらは"密室"に特化しています。

 

 

マジックミラー

作者は有栖川有栖
有名な"アリバイ講義"で知られる作品です。

 

黒いトランク

作者は鮎川哲也
氏の事実上のデビュー作ともいわれます。