~読者が犯人を決めるミステリ~
深水黎一郎『犯人選挙』講談社
あらすじ
築30年の「大泰荘」で8人の大学生が共同生活を送っていた。
ある朝、マッチョな男性住人が鍵のかかった自室において遺体で発見される。
深夜には建物の玄関にチェーン錠がかけられるため、
たとえ鍵を持っていても中には入れない二重の「密室」で誰が彼を殺したのか?
住人の誰もが怪しく、誰にも動機が……。
引用元:講談社BOOK倶楽部
(http://kodansha-novels.jp/1909/fukamireiichiro/)
築30年の「大泰荘」で
8人の大学生が共同生活
何も起きないはずがなく……
主要登場人物
加藤 大祐(かとう だいすけ)
主人公にしてメインの語り手。
将来の夢は文学で身を立てること。
蒔丘 亜沙美(まきおか あさみ)
美人で女王様気質。
アーティスト志望で、専門はパステル画。
たまに語り手にもなる。
栗林 謙吾(くりばやし けんご)
マッチョ。日焼けサロンに通っている。
将来の夢はボディビルダー。
槇 洸一(まき こういち)
法学部の学生で成績優秀。
ミステリー研究会に所属している。
将来の夢はミステリー作家。
特徴
本書の最大の特徴は"読者投票で犯人を決めた"ことにあります。
問題編にあたる部分を過去にネットで無料公開し、それに基づいて犯人になってほしい人物への投票を募っていました。
投票先は7つあり、本書では得票率にかかわらず、すべてのパターンの結末が掲載されています。
ただし、ちょっとおふざけが過ぎる展開も散見されるので、シリアスなストーリーを期待していると興ざめするかもしれません。
(かくいう私は机を叩き壊してしまうほど笑わせてもらいましたが)
この小説に向いている人
・ある程度ミステリに読み慣れている。
・多重解決が好き。
・バカミスが好き。(本書は"それ"に片足を突っ込んでいます)
この小説に向いていない人
・重厚なストーリーを期待している。
・メタ要素が苦手。
・登場人物に深く感情移入する。
・おふざげが好きじゃない。
まとめ
読者が犯人を決めるという試みに挑戦した怪作です。
付録として選挙の開票結果もついており、当時の読者が誰に投票したかも知ることができます。
結果に対する作者の考察も添えられていますね。これがまた面白いですよ。
追記①この小説が好きな方にオススメ
ミステリー・アリーナ
同じ作者(深水黎一郎)の作品。
ミステリマニアたちが、早い者勝ちの犯人当てクイズに挑みます。
第16回本格ミステリ大賞ノミネート作。
名探偵のいけにえ
著者は白井智之。
1978年11月にガイアナ共和国で起きた人民寺院事件をモチーフにした作品です。
多重解決のひとつの完成形を提示した作品です。